つなぐメッセージ

MESSAGE


あいづまちなかアートプロジェクト実行委員会 委員長あいさつ

会津若松市長 室井 照平

 あいづまちなかアートプロジェクトは、会津若松市文化センターや會津稽古堂をはじめ、まちなかの蔵や歴史的な建造物を会場に、会津の文化資源である「漆」を、芸術という視点で広く発信していく「会津・漆の芸術祭」、並びに会津ゆかりのアーティストの作品や、本市が収蔵する美術作品等に気軽に触れる機会を提供する「まちなかピナコテカ」の2つを融合して開催する事業として、2013年のスタートから今年で8年目となります。

 参加・出品いただきました全国の漆芸大学やアーティストの皆様、地元商店街、会津漆器協同組合や漆器職人の皆様をはじめ、多くの関係者の皆様のご協力を賜りながら、開催を迎えられましたことを、この場をお借りしまして心より感謝申し上げます。

 昨今の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向け、様々な社会活動が自粛される中において、多くの方々が日常生活を制限されるなど、見通しの立たない不安な日々を送っておられることと思います。こうした時期だからこそ、アートの持つ力が私たちの心を癒し、豊かな創造力を育み、希望や夢を描く力を与えてくれるものと信じております。

 各会場では、新型コロナウイルス感染拡大防止対策を万全に講じております。また、会場へお越しいただけない方にもアートを楽しんでいただけるよう、ホームページ上での公開も予定しております。

 今年のプロジェクトテーマは「つなぐ」です。先人たちと次世代とのつながりだけなく、これからの「新しい生活様式」の中に、これまでの文化芸術をどうつなぐことができるのか、ソーシャルディスタンスをとりながら心や想いをどうつないでいくのか。皆様とともに考えていきたいテーマです。

 本プロジェクトを通じて、文化芸術をより身近に感じられる豊かなまちづくりを目指してまいりますとともに、多くの方々に足を運んでいただけるアートイベントとなりますよう、皆様のご協力を賜りますようお願い申し上げまして、あいさつとさせていただきます。

あいづまちなかアートプロジェクト実行委員会 総合アドバイザーあいさつ

会津大学短期大学部 産業情報学科教授 井波 純

 今年、第8回目を迎えるあいづまちなかアートプロジェクトは、新型コロナウイルス感染症の影響による「新しい生活様式」の中で開催されます。今年のテーマは「つなぐ」。当初このテーマは、これまでのアートプロジェクトの流れとそこで育まれた人との交流、文化の創生、技術の継承などをさらに未来につなげ、発展させていくことを主として考えられました。そして迎えた現在の社会状況は、これまで当たり前だった人や物とのつながり方に大きな変化をもたらしています。人と人との距離がおかれ、日常のつながりにも不自由な点が現れました。その反面、これまで知らなかった遠くの人同士が、同じ思いや新たな表現でのつながりを持ち、励まし合う心の交流も見られます。その中で今一度「つなぐ」というテーマに触れたとき、それは今を生きるすべての人が経てきたここまでの人生、そして先にある未来との接点に立ち、その一瞬が次の時代へつながっていくと実感することでしょう。

 会津若松市は今年430年目を迎える蒲生氏郷の入府以来、東北の地で先進の文化芸術、工芸、産業の発展を続け、その時々に先人たちは感覚を研ぎ澄まし、知恵を活かして現在の会津を築いてきました。ご覧いただくみなさんに、会津での文化芸術を体感していただくことで、この国が育んできた伝統への誇りを再確認し、そして会津から未来に向けて発信すること、伝えたいことが何かを考える機会として、今年のあいづまちなかアートプロジェクトに触れていただければと思います。

 新しいAIZUの美術展では次代を担う作家たちの力作が揃います。会津漆器協同組合青年部の作り手は、会津漆器の新たな挑戦として蒲生氏郷からイメージした野点茶道具を制作します。全国で漆工芸を学ぶ大学生たちは、漆と向き合う若い力の今を表現し、その作品を展示します。他にも会津を代表する美術家橋克幸の展覧会や、歴代の収蔵名作も一堂に会します。

 新しい生活様式を守りながら、是非本年もあいづまちなかアートプロジェクトにお出かけいただきたいと思います。

大矢一成  (公立大学法人 京都市立芸術大学  漆工専攻 准教授 うるし その可能性と未来)

 今年の4月、突然迫られた大学実技のリモート授業に、学生も教員も戸惑いました。素材や道具を学生に届け、お互いに慣れない画像配信で授業が始まりました。「漆工芸の身体感覚的な所作をいかに伝えることができるのか。」ということも大事でしたが、最も大変なのは、「作品を生み出す心の火を灯し続けることができるか。」ということでした。相次ぐ展覧会の中止で、制作の目標を失っていた学生たちに、あいづまちなかアートプロジェクトの開催を伝えると、参加に即答してくれたのは、昨年までの会津真夏の漆塾や、展示に参加していた学生たちでした。このプロジェクトに参加して8年。その絆は確実に会津と京都の学生の心とつながっています。漆の芸術祭開催を決意し、制作への情熱をつないでくださったことに感謝しております。そして、皆様の作品が、来場者と作者の心の世界をつないでいくことを切に願っています。

佐藤達夫 (会津工芸新生会 会長 第56回会津工芸新生会展)

 いつの時代も困難はあるし、めまぐるしく変わって行く時代に翻弄されて来た。しかし、いつもアートと伝統工芸は大きなパワーとなり多くの作品を広く発表して来た。魅力的な素材を自身の発想のままに今の思いを表現してみることは自由で楽しく面白い。可能性を求めベクトルを上げ乗り越えた先に未来が来る。私たちは未来にキラリ輝く襷をつなぎたい。

小椋大祐 (会津漆器協同組合青年部 会長 会津漆器野点茶道具制作プロジェクトと会津漆器協同組合青年部作品展)

 漆器にとって「つなぐ」ことはとても重要なことで、漆器は一人でできるものではありません。

 木地は素材となる木を山から切って運び出すことから始まり、製材荒型造りそして木地師による製品加工となります。

 漆の木の植栽育成や、漆の採取は今も人の手で行っています。木地に漆を塗る塗師、蒔絵や沈金など装飾を行う蒔絵師、そして集荷や販売を担う問屋と全てにおいて人の手と想いでつないで皆様の手に渡ります。

 それぞれその技術は師匠や親方など先人から受け継がれてきました。そのサイクルが1つとして途絶えてしまうと漆器は作れないということです。伝統工芸は存続が難しくなっていますが、次の世代に「つなぐ」ために我々は頑張っていこうと思っています。漆器はとても魅力的なものです。皆様の手に取っていただけるようその魅力を伝えていきたいと思います。

髙橋克幸 (アーティスト 髙橋克幸作品展「地球がくれたポエム」 ・子どもたちとアーティストによる特別企画「髙橋克幸絵画教室 ART-LINK-SESSION」作品展・ライブペインティング映像作品「音画 -おとえ-」)

 人は一人では生きていけないことを、強く、強く、再確認させられる。

 今までいかに恵まれた環境で暮していたことだろうか。

 愉快な友人達、毎日の楽しいハプニングやアクシデント。人とのコミュニケーションを基に絵を描いていた私にとって、このコロナ禍に於ける自粛生活は筆の進みを遅らせた。

 それでも、きっと遠くない未来、誰かに作品を観て頂ける日を夢見て、何度も何度もキャンバスに色を重ねた。そして心の底から祈る。届け!届け!繋がれ!

持田勇貴 (漆芸作家・アルテマイスター社員 新しいAIZUの美術展・あるてくり2020作品展)

 コロナウイルスという歴史に刻まれる災害を目の当たりにして、様々な問いかけが行き交い変化が求められているように思います。

 大きな変化点を迎えた今、芸術に何ができるのでしょうか?

 芸術の本質に考えや想いを「つなぐ」といった要素があると私は思います。

 せっかく深く考える機会が与えられたこのコロナ禍において、自分のこと、社会のこと、世界のことを見つめ直し、その考えや想いを芸術という手段を用いて自分を取り巻く世界へつないでいきたいと思います。

小椋 千聖 (会津学鳳高校美術部部長(2年) 若い感性から生まれた作品たち~U-18の作品展~)

 私たちは美術部員として、様々な思いや願いを一本の筆にのせて表現しています。

 今回の美術展には、かつて危機感なく暮らしていた私たちではなく、コロナ禍により変化した世界を感受した私たちが描いた作品が展示されます。

 作品には、高校生らしい視点や感情が練り込まれています。

 ぜひ多くの皆さんに観ていただき、作品から受けたメッセージを周りの人たちや世界の人たちへと繋いでいってほしいと思います。